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2012年6月 5日 (火)

後家殺し

これも三遊亭圓生師匠を聴いて・・・。
職人の常さん、大変に義太夫に凝っている。
ある日、町内の伊勢屋という大きな質屋で開かれた会で、「平太郎住家」を一段語ったのが縁となって、そこの後家さんといい仲になり、もう三年越し。
後家さんは年のころ二十七、八で、色白の上品ないい女。
常さん、コソコソ隠れてするのが嫌いな性分なので、堂々とかみさんに打ち明けると、このかみさんもさばけたもの。
決してうれしいことではないが、私を追い出すというのでさえなければ、おまえさんがほかに変な女に引っ掛かるよりはいいし、男の働きだからと公認してくれている。
そんなわけで、本宅と伊勢屋に一日交代で泊まり、向こうも心得たもので、月々にはちゃんと金も届けて寄こすし、うらやましいご身分。
ところが、その話を聞いた友達がやっかみ半分に、あの後家さんは、もうとうにおまえに飽きが来て、荒井屋という料理屋の板前で喜助という男とできていると吹き込んだから、常さんは心穏やかではない。
喜助は女殺しの異名を取り、小粋ないい男。
疑心暗鬼にかられた常吉、ついにある夜、出刃包丁を持って伊勢屋に踏み込み、酒の勢いも借りて、「よくもてめえはオレの顔に泥を塗りゃあがったなッ」
後家さんのいい訳も聞かず、馬乗りになると、出刃でめった突き。
なます斬りにしてしまった。
あとで、その話はまったくの作り話と知れ、後悔したがもう遅い。
お白州へ引き出され、打ち首と決まった。
「その方、去る二月二十四日、伊勢屋の後家芳なる者を殺害いたし、重々不届きにより、
重き科にも行うべきところ、お慈悲をもって打ち首を申し付ける。ありがたくお受けいたせ」
「ありがたかありません」
「今とあいなり未練なことを申すな」
奉行が、いまわの際に一つだけ願いを叶えてつかわすというので、
常さん、義太夫で、「後に残りし女房子が、打ち首とォ聞くゥなァらばァ、さそこなげかァーん、ふびんやーとォー」と語ると
奉行、ぽんと膝をたたいて、「よっ、後家殺しッ」
痛ましい噺ではありますが・・・。

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