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2012年5月12日 (土)

紫檀楼古木

これまた珍しい噺の「紫檀楼古木(したんろうふるき)」。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8120600
紫檀楼古木(1767~1832)は
歌師。
Photo霊岸島白銀町または内神田に住み、大工職であったが生計立たず、羅宇竹(らおだけ)のすげ替を業として市中を歩いた。
狂歌を朱樂菅江(あけら かんこう)に學び、また近隣に住む六樹園の門人らと交通した。奇人で家事に頓著せぬため赤貧であったが、狂歌にのめりこみ、遂に妻から離別を要求されたという・・・。

ある御宅で声が掛かり、銀のキセルの掃除を頼まれた。
降ろした箱から小さな腰掛けを出して、どっかり腰を下ろし、仕事に取りかかります。
今戸焼きの小さな火鉢を取り出し、その中にタドンがいけてある。
熱くなっている灰の中に雁首を入れ、ジュージューヤニが溶け出したのを見計らい、取り出してボロ切れでラオを巻いて雁首は樫で出来た万力に挟んで回すと外れる。
吸い口も同じように外す。
雁首と吸い口を掃除し、サイズの合った新しいラオを暖め雁首にはめ込み、吸い口もはめ込み才槌でキツく一体化する。
接合部の漏れを確認するため、火皿を指で押さえ吸い口から2.3回パッパっと吸って「ハイ出来ました」とお女中に渡した。

御新造さんに、「汚たな爺が吸い口を吸ったから、お湯をかけてきます」とご注進におよんだ。
「そんなに汚い爺さんなの」
「汚な国から汚いを広めにきたようなお爺さんです。ウソだとお思いだったら、窓の下にいますからご覧なさい」
「本当にねェ~」。
それを聞いていたラオ屋さん、スラスラ筆をとって女中に手渡した。
それを見た御新造さん、いい手だと誉めておいて、読むと、
牛若の御子孫なるか御新造が我をむさしと思い給ふは
「私がね、爺さんのこと『むさい』と言ったので、牛若になぞらえて詠んだもので、見事なもんだわ」。
御新造も墨を擦って返歌を詠んだ。
それを見た古木もいい手だと誉めておいて、読むと、
弁慶と見たはひが目か背に負いし鋸もあり才槌もあり
「わしの道具に引っかけたのは上手いものだ」と、その即詠に感じ、また返したのが、
弁慶にあらねど腕の万力は、きせるの首をぬくばかりなり  ふるき」。

それを見た御新造さん、”ふるき”の署名を見てびっくり。
ただのラオ屋さんでなく狂歌の大宗匠だとビックリ。Photo_2
このまま返すのは失礼であるからと、陽気が寒くなってきたことだし、亭主のための綿入れの羽織を着て貰おうと女中に持たせた。

追いかけて、古木に渡そうとすると、丁重にお礼を述べ、「御新造によろしく伝えてくれ」と伝言し、
「羽織を着ていなくても、この荷さえ有ればなぁ充分、
『(売り声で)はおりやァ~~、きてェ~るゥ』」。

狂歌のような言葉遊びの噺というのは、大変格調も高く、演る方は面白いかもしれませんが、聴き手を掴むのは難しいと思います。
ましてや、ラオやキセルなどというのは、ほとんど分からなくなりつつありますから・・・。
確か、「朝日名人会」だったと思いますが、圓窓師匠で聴いた記憶があります。
私は、こういう噺は好きですよ。

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