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2012年5月30日 (水)

禁酒番屋

これも名作落語だと言えるでしょう。
酒癖は人によって様々
、良い酒もあれば悪い酒癖もある。
最も悪いのは酒乱というやつ。
森安芸守の藩中で月見の宴が開かれた。
その宴席で酒癖の悪いのが絡んで、相手の若者を殺めてしまい、翌日目覚めて慌てたが後の祭り、切腹してしまった。
酒のせいで若者二人を亡くした殿様が、禁酒令を出した。

最初のうちは禁酒が守られていたが、その内に、禁酒令もどこ吹く風になってしまった。
これではいけないと、今度は門の脇に番屋を建てて、飲酒の取締りと酒の持ち込みを厳しく取締まった。
これを誰言うとはなしに「禁酒番屋」と呼んだ。
酒好きな近藤という侍が贔屓の屋敷前の酒屋を訪れ、五合升に2杯旨そうに平らげた。金に糸目は付けないから、1升寝酒に届けるようにと言い捨てて店を出ていった。
店の者は事情が充分判っているので困った。
小僧の一人が、徳利を下げては門をくぐれない。
最近売り出された”カステラ”を買ってきて、五合徳利2本を入れ替えて持ち込めば分からないと言い出した。
すっかり菓子屋の支度を整えて番屋に「その方は何者だ」
「向こう横町の菓子屋です。近藤様のご注文でカステラを持参しました」
「近藤は酒飲みだが菓子を食べるようになったのかな? 間違いがあっては困る、こちらに出せ」
「お使い物で、水引が掛かっています」
「進物か。それなら通れ」
「アリガトウございます。ドッコイショ」
「待て!今『ドッコイショ』と言ったな」

「口癖ですから」
「役目であるから、取り調べる。水引は自分で直せ。この徳利は何だ。徳利に入るカステラがあるか」
「最近売り出された”水カステラ”でございます」
調べるからと、水カステラならぬ酒を飲まれてしまった。
その上「この偽り者。立ち帰れ」。
店に帰って、経緯を話すと、今度は油屋に変装して”油徳利”だと言って通ってしまうと言い始めた。
支度を整え、「お願いでございます」
「通~れェ」先程と違って役人は酔っている。
「油屋です。近藤様の御小屋に油のお届け物です」
「間違いがあっては困る、こちらに出せ。油徳利であるが、水カステラの件がある、取り調べる。控えておれ。御同役、水カステラの味がする。棒縛りだ、この偽り者、立ち帰れ」。
店に駆け戻ったが、「また飲まれてしまった。これで2升だ」
「番頭さん、『偽り者、偽り者』と言われて、黙っていられますか。今度は敵討ちに行かせて下さい。」
「ダメだよ。今度飲まれたら3升だよ」
「いえ、今度は酒を持っていかない。・・・小便です」
「そんな事したら後が大変だ」
「大丈夫です。小便屋が小便を持って行くのです。それを飲む奴がイケナイ。オ~イみんな、ここに出してくれ」と言う訳で、徳利一杯にして、持ち出した。
「お願いでございます」
「通ォ~れェ」、先程以上に役人は酔って、ろれつが回らない。
「近藤様の御小屋にお届けです」
「どちらだ」、「向こう横
町の・・・、植木屋です」
「何を持参した」
小便です
「ん、なんて申した」
「小便です」「バカ。小便を注文してどうする」
「松の肥やしに」
「出せ。これに出せ」
「どうぞごゆっくりとお調べの程」
「黙って出せ。間違いがあっては困るので取り調べる。最初は水カステラ、先程は油と偽って、今度は小便と偽って・・・、町人というのはたわいのない者だ。御同役、今度は燗を付けてきたようであるぞ。この偽り者め。控えておれ。(湯飲みに取り出して)燗が付きすぎたようで泡立ちしておる。(口まで運んで)・・・ん、○X△。かような物を持参して」
「最初から小便だと申しております」、
「う~~ん、正直者め」。

何度聴いているでしょう。
庶民が権力に対して、ささやかな抵抗をするという、典型的な落語かもしれません。
役人が酔っ払って行く過程が面白く、考えてみれば汚い噺ですが、人気があるのでしょう。
学生時代に、生で聴いた「柳家小はん」師匠が印象に残ります。


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