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2012年5月 9日 (水)

猫怪談

ほとんど演る人のいない、聴いたことのない噺。
ところが、学生時代の持ちネタのひとつという・・・。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5298785Photo_8
深川蛤町の裏長屋に与太郎が住んでいたが、育ての親の親父が死んでしまった。
線香も買えず、その支度準備が未だ出来ていないが、早桶だけは準備出来ていた。
大家さんの所の菜漬けの樽で、人の樽を勝手に使うなと言うと、「ヒト樽だからいい」。
借りるのではなく、買って一段落。
大家さんが一通りの手配をして、お寺の場所を確認すると、谷中の「瑞林寺」だという。
お金がないから早々に通夜も済ませ、与太郎が後棒、月番のラオ屋の甚兵衛さんが前棒、大家さんが提灯持ちという出で立ちで、四つ(今の夜10時)に担ぎ出した。
Fw:d'dy
上野の「いとう松坂」に差しかかったのが、もう九つ(12時)。
そこを右に曲がって、「三枚橋」、「池之端」にかかり、「七軒町」を通って「谷中」に抜けるのが近道。
Fw:d'dy
旧暦11月、寒く霜柱を踏みしめながら池之端を抜けるころ、恐がり屋の甚兵衛さんは、時間が時間なので恐くてしょうがない。
Fw:d'dy
与太郎に脅かされながら担いでいたが、肩に食い込む痛さに肩を変えてくれと頼んだ。
与太郎、加減を見て持ち上げれば良かったのを、思いっきり放り上げるように持ち上げたので、縄がヤワになっていたのか、底が抜けて仏様が飛び出してしまった。
その上、桶が壊れてしまったので、直そうとしたが、タガまで切れてバラバラになってしまった。
近くの「仲町」ではダメなので、「公徳寺前」まで早桶を買いに行く事になった。
一方、一人残された与太郎は、仏様を寝かせて、その隣にぼんやりと座っていた。
前は不忍池、その後ろは上野の森。
夜の水は不気味なものだが、その奥に黒くたたずむ弁天堂が見えようと言う場所。
そこに風が吹いて、枯れアシがガサガサと音を立てる、その風が上野の森に渡っていき、ゴ~~っと唸っているが、馬鹿の与太郎でもいい心持ちはしない。Photo_9
死んだ親父に語りかける与太郎さんだが、5,6間先に何か黒い物が横切った。
そのとたん、仏様が動き始め正座をして与太郎に向かって「イヒヒ」と声を発した。
ビックリして、殴ってしまったら、仏様は横になってしまった。何か言い足りない事があったら聞くから、もう一度起きあがってくれと頼んだ。
今度は立ち上がって、ピョンピョンと跳びはねたので、「お父っつぁんは上手」と手囃子して騒いでいた。
その時、強い風が吹いてきて、風に乗って行ってしまった。
大家さんと甚兵衛さんはその声に気づいて与太郎さんの元に帰ってきた。
事の顛末を聞いてあきれる大家さんだが、甚兵衛さんはふるえが止まらず「抜けてしまいました」の言葉だけ。
「何が、抜けてしまったのだ。今、買ってきたばっかりじゃないか」と大家さん。
甚兵衛さん「今度は私の腰が、抜けてしまいました」。

これがオチなのかなぁぁ。
私が参考にさせてもらったのは、入船亭扇橋師匠でしたが、圓生師匠からのものだったようです。
腰が抜けたと言った後で・・・、
「えらい騒ぎで、この死骸が翌日、七軒町の上総屋という質屋の、土蔵の釘にかかっておりまして、ここで、また早桶を買う、ひとつの死骸で三つの早桶を買ったという、谷中奇聞”猫怪談”でございます」。
って、演っていました。勿論、私もそうしました。
怪談噺は夏の特許で、この噺のように真冬の怪談噺は少ないし、与太郎が主人公というのも珍しいと思います。
この噺は、構成上長い話の一部分と思われています。
「谷中奇聞」というのですから、その前半部分なのか中段なのか、はたまた後半なのか?
何故、こんな噺を演ったかと言いますと、扇橋師匠の与太郎が物凄く気に入ったのと、その与太郎の台詞「お父っつぁん、なんで死んじまったんだよぅ・・・」に、涙が止まらなくて。
「佃祭」でもそうでしたが、愚かしい与太郎の素直な言葉が、多くの人が忘れている人間の本質を突いているからだと思います。
Fw:d'dy
この噺、学生時代に一度演っただけですが、恥ずかしいことに、当時は、「谷中」「七軒町」「公徳寺前」も、「不忍池」との位置関係など全く知らずに演っていました。
谷中の「瑞輪寺」は、日蓮宗の名刹だというのも、社会人になってから知りました。
場面設定すら出来ていないのですから、酷いものだったと思います。

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