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2011年11月10日 (木)

噺の徘徊師

師匠から、私の投稿の入った高座本をいただきました。
噺の徘徊師流三の「噺の徘徊師」という・・・。
師匠の高座本「救いの腕」の巻末に、その噺にまつわる話題などを掲載していただきました。
噺の徘徊師
【救いの腕】
「圓窓五百噺」の第499番目、師匠が女性作家の唯川恵さんの短編小説をヒントに創作された噺。
今まで演ったことのないパターンの噺にチャレンジしてみようと、師匠にお許しをいただいて取組んでみました。
「男が、男の目で、男を主人公にして口演される」噺が多い中で、女性を主人公にして、女性の会話だけで噺が展開して行くのです。
ところが、原作者の師匠しか口演されていない噺で、しかも女性同士のやり取りが続くために、今まで経験したことのない高い壁にぶつかってしまい、なかなか出来上がらず、本当に悩みました。
「耳慣れない噺だから、とにかく耳で慣れることだよ」と師匠からのアドバイス。
そして苦心惨憺の上で臨んだ本番の高座の当日。
客席には、おかげさまで中年の女性を中心にいっぱいのお客さま。
マクラをふって本題に入ってしばらくすると、ちょっと不思議な感覚に捕われました。
喋っているのは確かに私なのですが、噺を進めているのは私ではないのです。
噺の中の姉妹の会話が客席に入り込み、観客側が噺を引っ張り、拙い芸を超えてストーリーが展開されている・・??
オチの後に「あぁぁ・・」という、溜息のような声が聞こえて来ました。
「自分のことのように聴きました」「身に詰まされてしまいました」と、何人もの女性の方が声をかけてくださいました。
実は、自分では予想もしていなかった反応でした。
「あれは、私が喋った噺ではない。演者を越えて、作品と観客の方々が勝手に共鳴して出来上がった高座だった。」・・・。
そんな気がしています。
最近では女性の噺家さんも増え、素人落語ではむしろ女性の方が多いぐらいなのですから、これからは「女性が、女性の目で見た、女性が主人公の噺を、女性が口演する」機会も増えて行くことでしょう。
師匠から頂戴したこの噺、これからも大切にし、折に触れて口演を繰り返してみたいと思っています。
再びあの快感と感動に出会えるように。
今後、「噺の徘徊師」として、師匠の高座本に登場して行きたいと思います。

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