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2011年10月18日 (火)

噺の考察集「救いの腕」

師匠の各高座本の巻末の「噺の考察集」への投稿文を考えてみました。
「救いの腕」高座本2冊
【救いの腕】
「圓窓五百噺」の第499番目、師匠が女性作家の唯川恵さんの短編小説をヒントに創作された噺。
今まで演ったことのないパターンの噺にチャレンジしてみようと、師匠にお許しをいただいて取組んでみました。
男が、男の目で、男を主人公にして口演される噺が多い中、女性を主人公にして、女性の会話だけでストーリーが展開して行きます。
ところが、原作者の師匠しか口演されていない噺で、しかも女性同士のやり取りが続くために、今まで経験したことのない高い壁にぶつかってしまい、なかなか出来上がらず、本当に悩みました。
「耳慣れない噺だから、とにかく耳で慣れることだよ」と師匠からのアドバイス。
そして苦心惨憺の上で臨んだ本番の高座の当日。
客席には、おかげさまで中年の女性を中心にいっぱいのお客さま。
マクラをふって本題に入って暫くした時でした。
ちょっと不思議な感覚に捕われました。
喋っているのは確かに私なのですが、噺を進めているのは私ではないのです。
話の中の姉妹の会話が客席に入り、観客が噺を引っ張って、拙い私を助けてくれている・・??
オチの後に、「あぁぁ・・」という溜息のような声が聞こえました。
「自分のことのように聴きました」「身に詰まされてしまいました」と、何人もの女性の方が声をかけてくださいました。
実は、自分では予想もしていなかった反応でした。
「あれは、私が喋った噺ではない。演者を越えて、作品と観客の方々が勝手に共鳴して出来上がった高座だった。」そんな気がします。
師匠から頂戴したこの噺、これからも大切にし、折に触れて口演を繰り返してみたいと思っています。
再びあの快感と感動に出会えるように。
ちょっと長すぎるかな・・・と思いつつ、師匠にメールを送りました。

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