« 葉月の落語徘徊 | トップページ | インターネット落語会 »

2011年9月 1日 (木)

猫の災難

これも、題名から主人公であるはずの猫は登場しない噺です。

Photo_7

朝湯から帰ってきて、一人でぼんやりしていると急にお酒が飲みたくなってきた。
しかし、熊五郎は一文無し。逆立ちしたってお酒が飲めるわけがない。
「飲みてえ、ノミテェ…」と唸っているところに、隣のかみさんが声をかけた。
見ると、大きな鯛の頭と尻尾を抱えている。
なんでも、猫の病気見舞いに特大の鯛をもらって、身を食べさせた残りだという。
捨てに行くというので、「眼肉(咀嚼筋)がうまいんだから、あっしに下さい」ともらい受けた。
「このままだと見栄えが悪いな。そうだ…」
ざるの上に載せ、すり鉢をかぶせてみたら何とか鯛があるような形になった。
これで肴はできたが…肝心なのは『酒』だ。
「今度は、猫が見舞いに酒をもらってくれないかな…」
ぼやいていると、そこへ兄貴分が訊ねてきた。
「酒や肴は自分が用意するから、一緒にのまねぇか?」
そういった兄貴分が、ふと台所に目をやって…件の『鯛』を発見した。
「いい鯛が在るじゃねぇか!」
すり鉢をかぶせてあるので、真ん中がすっぽり抜けていることに気づかない。
「ジャア、後は酒を買ってくるだけだな。どこの酒屋がいいんだ?」
近くの酒屋は二軒とも借りがあるので、二丁先まで行って、五合買ってきてもらうことにした。
Photo_8 さあ、困ったのは熊だ。いまさら『猫のお余りで、真ん中がないんです』だなんていえる訳がない。
思案した挙句、酒を買って戻ってきた兄貴分に【おろした身を、隣の猫がくわえていきました】と告げた。
「どっちの隣だ? 俺が文句を言いにいってくる!!」
「ちょっと待ってくれ! 隣のうちには、日ごろから世話になってるんだよ…」
『我慢してくれ』と熊に言われ、兄貴分、不承不承代わりの鯛を探しに行った。
「助かった…。しかし、どんな酒を買ってきたのかな?」
安心した途端、急にお酒が飲みたくなる。
「どうせあいつは一合上戸で、たいしてのまないからな…」冷のまま、湯飲み茶碗に注いで「いい酒だ、うめえうめえ」と一杯…また一杯。
兄貴分の分は別に取っておこうと、燗徳利に移そうとした途端…手元が狂って畳にこぼした。
「おわっ!? もったいねぇ!!」畳に口をつけてチュウチュウ。
気がつくと、もう燗徳利一本分しか残っていない。
「参ったな。如何しよう…。仕方がない、また隣の猫に罪をかぶってもらうか」
兄貴分が帰ってきたら、【猫がまた来たので、追いかけたら座敷の中を逃げ回って、一升瓶を後足で引っかけて…】と言うつもり。
そうと決まれば、これっぱかり残しとくことはねえ…と、熊、ひどいもので残りの一合もグイーッ!
「いい休みだな。しかし、やっぱり酒がすべてだよ。花見だって、酒がなければ意味がねぇしな」
『夜桜ぁ~やぁ~♪』と、いい心持で小唄をうなっているうち、《猫を追っかけている格好》をしなければと思いつき、向こう鉢巻に出刃包丁。
セリフの稽古をしているうち…眠り込んでしまった。
一方、鯛をようやく見つけて帰った兄弟分。
熊は大鼾をかいて寝ているし、一升瓶をみたら酒がすべて消えている。
「なにやってんだよ!!」
Photo_9 「ウー…だから、隣の猫が…」
「瓶を蹴飛ばして倒した!? なんて事を…ん? この野郎、酔っぱらってやがんな。てめえがのんじゃったんだろ」
「こぼれたのを吸っただけだよ」
『隣に怒鳴り込む』と、兄貴分がいきまいている所へ、隣のかみさんが怒鳴り込んできた。「いい加減にしとくれ。家の猫は病気なんだよ。お見舞いの残りの鯛の頭を、おまえさんにやったんじゃないか!」
物凄い剣幕で帰っていった。
「どうも様子がおかしいと思ったよ。この野郎、おれを隣に行かせて、いったい何をやらせるつもりだったんだ!?」
「だから、隣へ行って、猫によーく詫びをしてくんねえ…」
この噺も難しい噺ですよ。
酒の飲み方、酔っ払って行く過程・・・・。
私は、酒を好みませんから、酒を飲むシーンで、酒らしく、それも上手そうに飲むのにはどうするのか、いつも悩んでいます。
この間の「佃祭」でも、酒を飲むシーンを作りましたが・・・。

« 葉月の落語徘徊 | トップページ | インターネット落語会 »

落語・噺・ネタ」カテゴリの記事