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2011年7月29日 (金)

広瀬さんの評論

pen広瀬和生さんの評論、今回は「入船亭扇遊」師匠。
独演会やホール落語と違い、寄席の定席では大勢の演者がチームプレイで流れを作って、主役である「トリ」に繋ぐ。
日常的に興行している寄席の世界では、脇役に徹しながら軽い噺できっちり繋ぐ「小回りの利く演者」も必要だ。
入船亭扇遊。
彼は寄席の世界で最も重宝な「程の良いオールラウンドプレイヤー」の代表格である。
トリを取る実力があり、脇役に回れば手堅く場内を温める。
前座噺から大ネタまで、どんな噺を演ってもその「噺」そのものが持っている面白さを巧みに引き出し、必ず客を満足させる、上手くて陽気で爽やかな寄席芸人。
それが扇遊だ。
1953年生まれ、静岡県出身。
1972年に入船亭扇橋に入門し、1985年に真打昇進。
古典の演者としての力量は若手の頃から折紙つきで、1983年に国立演芸場若手花形演芸会金賞、1992年には文化庁芸術祭賞を受賞している。
扇遊は、高座において自らの個性を強く主張するタイプではない。
あくまでも、伝統的な「古典落語の魅力」をそのまま提供する演者だ。
殊更に独自の解釈や新しい演出は求めない。
「昨今の落語家は古典を崩しすぎる」とお嘆きのかたには安心してお勧めできる。
決して地味な演者ではない。
リズミカルな口調と演技のメリハリは、むしろ派手だ。
なのにアッサリ味で、毎日聴いても胃もたれしない。
それは、扇遊に妙な気負いが無いからだ。
扇遊はよく客に向かって「落語なんて、バカバカしい噺をボーッと聴いてアハハと笑えばいいんです」という。
それは「落語は落語。余計なことは考えず、まともに演ればいい」という、自身の演者としてのスタンスの裏返しのように思える。
「落語は面白い。その、面白い落語をちゃんと伝えるのが噺家だ」
これが扇遊の考え方だ。
※週刊ポスト2011年8月5日号

私の好きな噺家さんの一人です。
初めてご尊顔を拝した時は、随分恐そうな感じの噺家さんだなと思いました。
でも、芸風はリズミカルで明るく、さすがに扇橋一門の総領です。
高座への出が大変にスピーディで、しなやかな身のこなしがいいですよ。
広瀬さんのコメントにもあるように、肩に力の入らないスタンスに裏打ちされた表情豊かな芸が魅力だと思います。
観客との位置取りも巧みで、決してへり下り過ぎず、不遜さもなく、気持ちよく噺に入って行ける、数少ない噺家さんだと思います。

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