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2011年5月27日 (金)

蒟蒻問答

落語を好きになっていなければ、「蒟蒻」という字を「こんにゃく」とは読めなかったことでしょう。
「竃」が「へっつい」、「幇間」が「ほうかん(たいこもち)」、「雪隠」が「せっちん」、「木乃伊」が「みいら」、「花魁」が「おいらん」・・・なども、落語に触れなければずっと知らずにいた言葉でしょう。
この「蒟蒻問答」は、今は亡き我が落研の創設者「麻雀亭駄楽」師匠の十八番だったそうで、その名演・名人ぶりは、創部時代の先輩の間で伝説となっています。
「駄楽さんは上手かった。誰も駄楽さんには敵わない」という・・。
確かに、生前「駄楽乱志二人会」のプランを二人で語り始めた時に、自らも「蒟蒻問答」のこともお話しになっていました。
先日の「朝日名人会」で、柳家三三さんがサクッとおやりになりました。
江戸で食い詰めた「熊」が、田舎住まいをしている「六兵衛兄ィ」のところへ転げ込む。
悪い遊びで髪の毛が抜けてしまった「熊」をみて、今は蒟蒻屋を営んでいる「兄ィ」は、無住になっている村はずれの破れ寺の住職にはめ込む。
一日、二人が庫裡で酒盛りをしているところに、訪なう声。
熊公が出てみると旅僧「拙僧は諸国行脚の雲水。
ご当寺門前を通りましたところ“不許葷酒入山門”とありますれば禅家と拝察。
修行のため一問答願わしゅう存じます」。
驚いた俄住職の熊公が、一所懸命居留守で追い払おうとするが、旅僧はテコでも動かぬ構え。
困り果て六兵衛に相談すると、知恵者の彼は「無言の行」でやればよかろう、と和尚になりすまし応じることにする。
さて、本堂で対面し、旅僧はいろいろ問うが、和尚勿論無言。
旅僧は、さてはと察し、やおら両の手の指で小さな輪を作り、胸の前からズイと突き出す。
和尚も何を思ったか、手にしていた払子代わりのハタキを襟に刺すと、これも両手指で大きな輪を作って押し戻す。
旅僧、ハハッと恐れ入り、今度は両手を広げて突き出す。
対する和尚は、片手を開いて応える。
旅僧、再度低頭し、必死の形相で指を3本差し出す。
和尚、すかさず人差し指で右目の下目蓋を引きながらベロをだす。
旅僧、「到底拙僧の及ぶところにあらず。両三年修行を致しまして……」と蒼惶として退散する。
驚いた熊公、逃げ帰ろうとする旅僧をつかまえ、一体どうなっていると訊く。
旅僧答えて、 「さては禅家荒行の内、『無言の行』中と拝察し、されば無言には無言にて問わんと、『大和尚、ご胸中は?』とお尋ね致しましたるところ『大海の如し』とのお答え、まことに以て恐れ入ったる次第。
続いて、『十方世界は?』とお聞き致しましたるところ、『五戒で保つ』とのお答え。何ともはや……。
及ばずながら今一問と存じ、『三尊の弥陀は?』との問いには、たちどころに『目の下にあり』と……。
まことにもって愚僧など遠く及び申しませぬ。今一度修行して出直して参ります。
御前体、なにとぞよしなに……」と走り去る。
「何だ、心配させやがったけど、兄ィ、てえしたもんじゃねぇか」て、と熊公が意気揚々本堂に引き返してくると、偽和尚「やい、あいつを逃がしちまったのか」とカンカンになって怒っている。
またまたびっくりした熊公が、どうしたと聞くと、六兵衛和尚曰く、「あいつは諸国行脚の雲水なんてとんでもねぇ。どっかの豆腐屋かなんかの回し者に違ぇねぇ。何を訊いても知らん顔をしていてやったら、俺の顔を穴のあくほど眺めてやがって、ははあこれは蒟蒻屋の六兵衛だなと気づきやがったとみえて、『おめぇんところのコンニャクはこれっぽっちだろう』 というから、『うんにゃ、こんなにでっけぇ』と言ってやった。
そしたら『10丁でいくらだ?」 と値を訊いてやがる。
少し高えと思ったが『五百(文)だ』 とふっかけてやったら、しみったれた野郎じゃねぇか 『三百にしろ』 と値切ったから『アカンベエ』をした。」

この噺は、何代目だったか「林屋正蔵」の作だと言われています。
当時は「林家」でなく「林屋」でした。
自身も僧籍にあったそうですから、なかなかリアルな展開になっています。
・・・そういえば、大学の先生で「林屋」教授という方がいらっしゃいました。
そうそう、「幾代」教授という先生もいらっしゃいましたよ。
あの大学のあの学部は、落語に縁があるのでしょうか?

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