一人酒盛
先月の東京落語会で柳家小さん師匠がやった噺。
上方バージョンと江戸バージョンがある様子。
引越ししたばかりの男の家に友人が遊びに来る。
男は酒でも用意するからゆっくりしてくれと言いつつ、自分は壁紙を貼っているのでちょっと火を起こしてくれ、水を汲んできてくれ、うどんの出前を頼んできてくれと、友人に酒の準備を全てさせてしまう。
さて、壁紙貼りが終わり、飲み始めると酒はほとんど男が飲んでしまう上に、男は酒癖の悪く、友人に向かって言いたい放題。
友人は終いには怒って帰ってしまう。
そこに出前を頼まれたうどん屋が着き、「今すれ違った人は、注文しに来た人だと思うが、えらい怖い顔で出て行きましたよ」と言うと、男が「放っておけ、酒癖の悪い男だ」。
八つあんが道を歩いていると、仲のいい熊さんが手招きをしています。
なんだ、なんだと寄っていくと、いいお酒が手に入ったから一緒に飲まないかと言う。
もちろん、八つあんに異存のあろうはずがありません。
熊さんは、奥から一升瓶を引っ張り出してきます。
八つあんは、気を利かして、肴を買いに行きます。
楽しい酒盛りが始まりました。
まずはお酒の持ち主である熊さんが一杯いきます。
おいしそうに飲み干した熊さんは、湯飲みに酒をつぎます、さて今度は八つあんが、一杯もらおうと楽しみにしていると、そのままぐいっと飲み干してしまいました。
せっかくの楽しい酒盛りです。
一杯や二杯のことで文句を言うようなことは八つあんはしません。
だいいち、お酒は熊さんのものです。
向こうが二杯飲んで、こちらが一杯というのが、礼儀というものでしょう、と八つあんは、自分を納得させ、次こそはと楽しみに待ちます。
熊さんは、そんな八つあんの気持ちにはお構いなく、今度は酒をなみなみと湯飲みについで、そのまま自分の口に運んでしまいました。
傍にいる八つあんもだんだん腹が立ってきました。
そして、とうとう「てやんでぇ、こちとら江戸っ子でい。酒なんて、家に帰れば浴びるほどあるんだい。畜生。おめぇの酒なんかいらねえよ」と怒って出ていってしまいました。
上機嫌の熊さん「なんだ、あいつは怒り上戸だったのか」。
こういうパターンは、落語ではよくある気がします。
故意か天然かは分かりませんが、全くのマイペースの人が出て来る噺。「猫の災難」なんていうのも、ちょっと似ています。
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