江戸っ子はなぜ・・
小学館の「落語CD 昭和の名人 決定版」に連載されていたものに加筆されたものだそうです。
よくテレビなどに着物姿で出演している「江戸学」の田中優子さん(法政大学教授)による、初めての「落語論」です。
人生に「勝ち」「負け」はない、自分ひとり幸せになる魔法もない--落語の登場人物がリアルに浮かび上がり、現代を生きる人々に語りかける、「しあわせ」への道しるべです。
一般社会からドロップアウトしそうな「与太郎」や「粗忽者」が、なぜ落語界ではスーパースターなのか。その理由がよくわかり、落語通にもオススメの一冊です。
最初のテーマが、「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」というよく聞く台詞です。
稼いだ金はちまちま貯めずにその日にぱっと使う、というようにとられていますが、この言葉の真意や背景を、落語の「三方一両損」を引き合いに論じています。
金離れがいい、金に執着しないという江戸っ子の気質について。
これは、ただ自分のことだけではなくて、長屋の暮らしにある相互扶助の了見もあるようです。
つまり、「宵越しの銭を持たない」というのは、自分のために贅沢をするというだけの意味ではなく、他人のためにも金を使ってしまう、という意味もあるという・・・。
当時の江戸の環境や経済状況にもよる、必然的な局面もあるのでしょう。
究極のエコタウンといわれた江戸のことですから、全てが循環していたとすれば、市井では、お金も対流せずに常に循環していたのでしょう・・・・。
「金は腕の中に入ってる」なんていうのは、職人の気概でもあったでしょう。
また、私も常々実感していることで、何度か似たようなコメントをしていますが、落語国のスター「与太郎」の扱われ方を見ると分かるのは、"出来の良くない・しょうもないやつ"でも、周りの人たちがなんとか、仕事に就かせようとしたり、まっとうな道を歩かせようとしているのです。
私は学者でも何でもありませんから、歴史や経済などの学問的なデータもなければ、それをベースにしたアプローチもできず、直接落語に触れた感覚だけで感じるのですが、田中先生の論調は、それがあながち外れた感覚ではなかったようです。
徘徊者としては、落語なんですから、この"感覚"が重要だし、それで十分だと思うのです。
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