切腹最中
先日の学士会落語会の時に、講談の寳井琴星さんが、「赤穂義士伝・外伝」を読まれた時に、マクラ(講釈もマクラと言うのかな?)で話題にした、「切腹最中」という物凄い名前の和菓子があります。
以前、落研の先輩の恋し家古狂師匠が教えてくださったのを覚えていたので、「あ~あ、あの最中のことか」と、すぐ分かりました。
と言っても、実物を見たことはありませんでした。
偶然、上野駅の東京みやげの店でみつけました。
早速買って食べてみましたが、なかなかの美味でした。
赤穂浪士のギザギザの陣羽織の模様に似せた箱に、以下のような説明がありました。元禄十四年三月十四日、殿中「松の廊下」で後の「忠臣蔵」へと発展する刃傷事件は起こりました。
巳の上刻(午前十時)から六つ刻(午後六時)過ぎにかけて、刃傷・・・・田村邸お預け・・・・評定・・・・切腹・・・・と、その日のうちに矢継ぎ早に執り行われたと言います。
「切腹」・・・・殿中での刃傷とあればや無を得ぬお裁きとはいえ、ここで問題なのは、浅野内匠頭がいかに青年の激情家であったにしろ、多くの家臣、家族を抱える大名であったのだから、今少し慎重な調査がなされても良かったのではなかろうかということでした。
喧嘩両成敗の原則をも踏みにじった、公平を欠く短絡的なお裁きが、後の義挙仇討ち「忠臣蔵」へと発展したことは否めません。
当店は、切腹された田村右京太夫屋敷に存する和菓子店として、この「忠臣蔵」にまつわる数々の語り草が和菓子を通じて、皆様の口の端に上ればという思いを込めて、最中にたっぷりの餡を込めて切腹させてみました。
「風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとやせん」の辞世の句とともに、本品が話しの花をさかせるよすがともなればと心を込めておつくりしております。
何卒、末永くご愛用の程伏してお願い申し上げます。
名付けて商品化した、ご店主の勇気に感服します。
知人・友人に相談すると、ほとんど全員から「売れないからやめろ」と言われた。
家族を説得するのに何年もかかった。
発売してもなかなか売れなかった。
ところが、店がオフィス街にあり、サラリーマンの客も多い場所柄、ある時に、サラリーマンが取引先に不始末のお詫びに、「詰め腹を切ってきたつもりでございます」と持って行ったところ、物凄く受けたという噂が広がり、人気商品になったとのこと・・・。
ブラックユーモアなのは、この箱に「大願成就」と書いてあります。