井戸の茶碗
「一番好きな噺は何ですか?」という質問に、かなり多くの人が「井戸の茶碗です」と答えると思います。
頓平師匠が、静嘉堂文庫美術館所蔵の重文「井戸茶碗 越後」の絵葉書をくださいました。
へぇぇ~、これが井戸の茶碗ですか・・。
「いびつでひび割れた、そこいらにありそうなただの茶碗じゃないの」だなんて、無粋なことを言っちゃあいけないんです。「ただの茶碗」ではなく「井戸の茶碗」なんです。
講談では「千代田卜斎」は、もとは広島浅野家の家来だったのですが、同僚の讒言で浪人するはめになったんだという。
この噺が人気があるのは、登場人物全員が善人だということでしょう。千代田卜斎にしても、屑屋の清兵衛さんにしても。全編にわたって気持ちよく聴き進むことができます。
そして、この善人の中でも最も光るのが、細川家の勤番「高木佐久左衛門」です。
「千代田氏のご息女であればまちがいはない」と、卜斎の娘を嫁にもらうことを決めるところなどは、大沢親分ではありませんが、「天晴れ!」ですよ。
本人を見もしないで嫁に決めるなんていうのは、現在では考えられないことですが、親を見る(見られる)というのは、極めて重要なポイントだと思います。
「夢金」とは全く逆のオチ、「よそう。また小判が出るといけない」。
潔い、品のある秀逸なオチだと思います。
芝浜の「よそう。また夢になるといけない」、火焔太鼓の「半鐘はいけないよ。おじゃんになるから」とも通じるオチですね。
いつか演ってみたい噺です。
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