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2010年8月18日 (水)

薮入り

自分で言うのも何ですが、私は祖父母・父母と妹の6人の、穏やかな家庭で育ちました。
刺激の少ない田舎で、周囲からの愛情を受けて、とても幸せな、のんびりした幼年時代を過ごしました。
大学進学のために初めて親元を離れたのが18歳の時、今思うと恥ずかしいぐらいですが、重症のホームシックにかかりました。
後年友人からも言われたことがありました。
「お前は、大学1年の夏休みが始まった途端、飛ぶように帰郷したなぁぁ。」
下宿の近くの電車の線路を見ては、「このレールは故郷に繋がっているんだなぁ。」なんて、メソメソしていましたよ。
家族の方もそうだったようで、妹から「家の中は灯が消えたようだ」なんていう手紙が来ました。
実家に帰省すると、祖母が嬉しそうに、しまっていてくれた茶碗と箸を出してくれる。そして休みが終わる時は、「また次の休みまで大事にしまっておくから・・」と、寂し気に言ってくれた。
そんな甘えん坊だったら、「薮入り」という噺を聴いた時は、全身が震えて、涙が止まりませんでした。
だから、大学4年の最後のネタに、迷わずに「薮入り」を選びました。(というより、学生最後の発表会は「薮入り」と決めていました。)
ちょうど、旧盆の時期、里帰りの時期ですから、「薮入り」に重なる部分もあります。

この噺を演る時、時代設定に迷いました。
一応古典落語の範疇に属するのでしょうが、どうも明治以降が舞台になっている・・。
もとは、全く別のストーリーだったのを、明治の後半に柳家小せんが「鼠の懸賞」という噺に改題したものだそうですから、背景は納得しました。
おかみさんの「まだ電車が動いてやしないよ」もおかしくない。

「おい、おっかぁ、亀は大きくなったろうなぁぁ・・・・。」
「何言ってんだい。亀はお前さんの前にいるじゃぁないか。」
「見られねぇんだよ。・・・見ようとすると、涙が後から後から出て来て、止まらねぇんだよぅ・・。」
これが言いたいんです。


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