佃祭
神田お玉が池の小間物屋の次郎兵衛さん。佃祭りを見物し、しまい船に乗ろうとすると、女に袖を引っ張られ引き留められる。
5年前に奉公先で5両の金をなくしてしまい、吾妻橋から身投げをするところを次郎兵衛さんに助けられ、5両の金をもらったという。
やっと思い出した次郎兵衛さん、しまい船も出てしまい、女が嫁いだ船頭の家に行く。
しばらくすると回りが騒がしくなり、亭主が飛び込んでくる。
しまい船が転覆して全員おぼれて死んだという。
次郎兵衛さんは仕方なく今夜はここへ泊まることにする。
一方、留守宅は大騒ぎ。
早桶、坊さんを頼み、くやみ客がぞろぞろ来る。
翌朝、女の亭主の船頭に送ってもらい次郎兵衛さんが帰ってくる。
皆、幽霊が出たとびっくりするが、次郎兵衛さんの話を聞き皆で大喜びする。
昨日の権太楼師匠は、「情は人のためならず。佃祭でございます。」で終わり、与太郎の戸隠様の梨まで持って行きませんでした。
「佃祭」は、それほどコテコテの人情噺ではありませんが、私はどうも、この噺の2ヶ所で必ず涙腺が緩んでしまいます。
まず、おかみさんの亭主の船頭が語る「吾妻橋の旦那」の部分。
どこの誰だか分からない命の恩人。ささやかな今の自分たちの幸せをもたらしてくれた大切な人を探し、感謝を忘れない気持ち。・・・これが駄目なんです。涙がポロポロ・・。
もう1ヶ所が、与太郎の悔みの場面。
与太郎は愚かしい存在だけれども、人の情、人への感謝の気持ちは人一倍持っている。
だから、次郎兵衛さんが死んでしまったことを、心の底から悲しんでいる。
この2つの場面は、落語の登場人物が、自分たちの境遇を素直に受け入れ、そこから健気に生きようとする、本当の人と人とのつながりを大切にしているという点で、落語の世界を一貫して流れているそのものを表現しているからでしょう。
【情けは人の為ならず (巡り巡って己が身の為)】
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