ラジオデイズ「救いの腕」
ラジオデイズに、昨年の一門会で師匠がお演りになった「救いの腕」がアップされています。この噺は師匠の創作で、落語では珍しい姉妹の会話から、ストーリーが展開していきます。
そこでの説明をそのまま載せることにします。大友さん、ごめんなさい。
【あらすじ】
二十歳のおまきが姉を訪ねてきて、亭主の善吉のことを愚痴ります。
善吉は十歳上なのですが、「毎日決まって暮れ六ツ(午後六時)には帰ってきて、何を聞いても返事は“ああ”“うう”。固い本を夢中になって読んでいるばかりで張り合いがない」とこぼします。
姉の亭主が何日もどこかで遊んできて、帰ってくればぶったりぶたれたり喧嘩ばかりなのとは大違い。
おまきはそんな姉夫婦がうらやましいようです。
実はおまきには忘れられない人がいるのでした。
それは十歳の時、向島の川で桜の枝を拾おうとしておぼれた時に、たくましい腕で救ってくれた男。気を失ってしまい、誰だかわからずに今日まできてしまったのです。
そう打ち明けて、亭主の善吉とは別れたいというおまきですが。
【聴きどころ】
姉妹の会話が中心で、若い女性が主人公という、珍しい噺です。
結婚してみたら亭主には何となくもの足りなくなり、腕の記憶だけが残る男性に惹かれてしまう。
揺れ動く女心が、川面の水に象徴されているようです。
女性同士のとりとめのない姉妹の会話は新鮮かつ自然で、師匠の表現の確かさが感じられます。聞いた後に優しい気持ちになれる、素敵な噺です。
【もうひと言】
近年は創作落語にも力を入れている師匠。この噺は若い女性を描いて定評のある作家、唯川恵さんの短編をヒントに圓窓師匠が作られたとのこと。そういえば、落語は男性の立場から作られたものばかりだなあ、と改めて気づかされます。まるでトリュフォーの映画を見ているような趣もあります。
何か霞がかかっているような、幼児の頃の体験や記憶・・・。
記憶が曖昧なだけに、極端に美化していることもあるようです。
そんな心理を、それも女心を巧みに表現する師匠の話芸とオチは、落語の素晴らしい一面を堪能させてもらえます。
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