(;ω;) 薮入りや なんにも言わず 泣き笑い (゚ー゚)
お盆は、「薮入り」の時期でもあります。お正月とお盆。奉公している人たちが家に帰ることができる日。
正月と7月16日に奉公人が休暇をもらって、自分の生家に帰ること。また関西地方の一部では奉公人だけでなく、嫁に出た娘が夫とともに里に帰り、畑仕事の手伝いをすることをいう村がある。その語義については定説はなく、藪というのは草深い意で、都会から草深い村落に帰る意味とか、ひとりぼっちで行きどころのない奉公人や里の遠いところのものが藪林(そうりん)に入って遊んだのがはじまりとか、帰るあてのない者は藪に入っているほかないからなどといわれているが、いずれもとるに足らない。藪入りの語があって、あとからこじつけて説明したにすぎないようである。
私は奉公していた訳ではありませんが、高校を卒業して大学に行き、初めて生家を離れた時、ホームシックになりました。家族の大切さが身に染みました。夏休みには、とにかく真っ先に家に帰ったことを覚えています。
この噺、恐らく明治以降に作られたものだと思いますから、"新作落語"なのでしょう。ところが、社会の変化で、"ネズミ捕り"は別の意味のことになり、有給休暇も取れるし、連休も増えて、噺の物理的な背景はなくなってしまいました。
でも、私がこの噺が好きなのは、人の道・人の心が語られているからです。どんなに時代が変わっても、この部分は決して変わらないでしょう。
「這えば立て たてば歩めの 親心」
「かくばかり 偽り多き世の中に 子の可愛さは まことなりけり」
大学の落研時代に、最後に選んだネタでした。圓楽師匠の音源を参考にしました。
この噺については、忘れられないこと、まだ語り足りないことがあります。いずれカミングアウトすることにします。
父親は朝からソワソワしています。いえ、前の晩からです。父親は女房に奉公に出た一人息子が帰ってきたら、ああしてあげたい、こうしてあげたいと言って寝かせません。
暖かい飯に、納豆を買ってやって、海苔を焼いて、卵を炒って、汁粉を食わしてやりたい。刺身にシャモに、鰻の中串をご飯に混ぜて、天麩羅もいいがその場で食べないと旨くないし、寿司にも連れて行きたい。 ほうらい豆にカステラも買ってやれ。
「うるさいんだから、もう寝なさいよ」、「で、今何時だ」、「2時ですよ」、「昨日は今頃夜が明けたよな」。
湯に行ったら近所を連れて歩きたい。赤坂の宮本さんから梅島によって本所から浅草に行って、品川の松本さんに挨拶したい。ついでに品川の海を見せて、羽田の穴守さんにお参りして、川崎の大師さんによって、横浜の野毛、伊勢佐木町の通りを見て、横須賀に行って、江ノ島、鎌倉もいいな~。そこまで行ったのなら、静岡、豊橋、名古屋のしゃちほこ見せて、伊勢の大神宮にお参りしたい。そこから四国の金比羅さん、京大阪回ったら喜ぶだろうな。明日一日で。
「おっかぁ、おっかぁ、って、うるさいんだから」、「で、今何時だ」、「3時少し回ったよ」、「時間が経つのが遅くないか。時計の針を回してみろよ」。
「な、おっかぁ」で5時過ぎに起き出して、家の回りを掃除し始めた。普段そんなことした事がないので、いぶかしそうに近所の人達が声を掛けても上の空。
抱きついてくるかと思ったら、丁重な挨拶をして息子の”亀ちゃん”が帰ってきた。父親の”熊さん”に言葉がないので、聞くと喉が詰まって声が出ない。
病気になった時、お前からもらった手紙を見たら、字も文もイイので治療はしていたが、それで治ってしまった。それからは何か病気しても、その手紙を見ると治ってしまう。
「おっかぁ、やろう、大きくなったろうな」、「あんたの前に座っているだろ。ご覧よ」、「見ようと思って目を開けると、後から後から涙が出て、それに水っぱなも出て、見えないんだよ」。
「あっ、動いている。よく来たなぁ。おっかぁは昨日夜っぴて寝てないんだよ」、「それはお前さんだろ」。
落ち着いた所で、亀ちゃんはお湯に出掛けた。
「おっかぁ。立派になったな。手を付いて挨拶も出来るし、体も大きくなって、手紙も立派に書けるし、着物も帯も履き物もイイ物だ。奥様に可愛がられて居るんだろうな」。「お前さん、サイフの中に小さく折り畳んだ5円札が3枚有るよ」、「子供のサイフを開けてみるなよ」、「15円は多すぎるだろ、なにか悪い了見でも・・・」、「俺の子供だ、そんな事はない。が、初めての宿りで持てるような金ではないな。帰ってきたら、どやしつけてやる」。
そこに亀ちゃんが湯から気持ちよさそうに帰ってきた。「そこに座れ。おれは卑しい事はこれっぽっちもした事はねぇ。それなのに、この15円は何だ」、「やだな~。財布なんか開けて。やる事がげすで、これだから貧乏人はヤダ」、「なんだ、このやろう」と喧嘩になってしまった。
亀ちゃんが言うには、ペストが流行、店で鼠が出るので、捕まえて警察に持っていくと、銭が貰える。そのうえ、ネズミの懸賞に当たって15円もらった。今日までご主人が預かっていたが、宿りだからと持って帰って喜ばせてやれと、持たせてくれた。その15円だという。
「おっかぁが変な事を言うものだから、変な気持ちになったのだ。懸賞に当たってよかったな~。許してくれよ。主人を大事にしなよ。”チュー”(忠)のお陰だ」。